東京高等裁判所 昭和38年(ラ)505号 決定
しかし、既に述べた事実関係に基いて考えるに、本件においては、競売の目的たる土地及び建物を個別に競売すると建物の敷地に法定地上権が生ずべきものと解されるから、競売裁判所が競売法第二八条により不動産の評価をなさしめ最低競売価額を定めるにあたつては、個別競売を前提とする限り、土地は地上権の負担があり建物は地上権を伴うものとして評価せしめ、これに基いて最低競売価額を定めるべきものと考えられる。
しかるに記録によれば、原裁判所は鑑定人中村誠一に命じた鑑定の結果に基き別紙目録記載(二)の建物の最低競売価額を金五四万二千円と定めてこれを競売期日の公告に掲げ、これを前提として競売手続を進め、右建物についてのみ競買の申出をした松尾善明に対し右建物の競落を許したことが認められるところ、前記中村鑑定人作成の評価書を検討するに、別紙目録記載(一)の土地五二坪四合二勺の評価は金一六七万七千円、同(二)の建物の評価は金五四万二千円であり、その評価額そのものによつても右建物は法定地上権を伴うものとして評価されていないとの疑が濃いばかりでなく、右評価書における説明によつても建物の評価にあたり右の関係が考慮されていることを窺うことができない。
(なお、記録によれば、現に前記競売期日における右建物の競買申出価額は右評価額を遙かに上廻る金一三〇万七千円であつたことが知られる)。してみれば、前記鑑定人による鑑定は、土地と建物を個別に競売し法定地上権の生ずる場合についての評価としては鑑定の基礎とした事項に齟齬があつたものと推認されるのであり、本件における建物のみの個別競売は右の最低競売価額を前提としてなされるべきものでないといわざるを得ない。
(岸上 中西 安岡)